通常より歯が多い「過剰歯(かじょうし)」とは?
原因やリスク、治療法を解説
人間の歯は乳歯が20本、永久歯が28本(親知らずを入れると32本)あるのが正常ですが、なかにはそれよりも歯が多く存在することがあります。今回は通常より歯の本数が多い「過剰歯(かじょうし)」の原因やリスク、治療法などをご紹介していきましょう。
過剰歯(かじょうし)とは
過剰歯とは、本来生えてくる本数よりも歯が多い状態のことをいいます。具体的には、乳歯なら20本、永久歯なら親知らずを含めた32本を超えて存在する歯が過剰歯となります。発生頻度は約3%で、女性よりも男性に、乳歯より永久歯に多くみられるのが特徴です。発生部位としては上の前歯が最も多く、そのほかに上の親知らず、下の小臼歯などによくみられます。
過剰歯の原因
過剰歯の原因はいまだはっきりとわかっていません。一説では、歯が作られる際、歯の元になる「歯胚(しはい)」が余分につくられること、途中で2つに分かれてしまうことなどが原因に考えられています。
過剰歯の種類
過剰歯は、生え方や位置によって次の3つに大きく分類されます。
①正中過剰歯
上の前歯の間や裏側に生えている過剰歯です。過剰歯の中で最も多くみられるタイプで、永久歯の萌出を妨げたり、正中離開(すきっ歯)が生じたりする原因になります。また、正中過剰歯のなかには骨の中に埋まったまま生えてこないケースもあります(正中埋伏過剰歯)。
②順性過剰歯
通常の歯と同じ向きに生えている過剰歯です。他の歯と同じように歯ぐきを破って生えてくることが多いため、歯が生えてから抜歯をするのが一般的です。
③逆性過剰歯
通常の歯とは逆の向きで生えている過剰歯です。歯が逆向きなため骨に埋まったまま生えてこないのがほとんどです。
過剰歯によって生じる問題
過剰歯があると、将来的に次のような問題が起こる可能性があります。
過剰歯が邪魔して永久歯が生えてこない
永久歯は通常、乳歯が抜けたあとにその場所に生えてきます。しかし、永久歯のある位置に過剰歯が存在すると萌出の妨げとなり、しかるべき時期がきても永久歯が生えてこられないことがあります。過剰歯のなかでも埋伏過剰歯は自覚症状のないことが多く、生えかわりの時期に永久歯が生えてこないことで発見に至るケースも少なくありません。
歯並びが悪くなる
過剰歯が他の歯を押してしまうことで、永久歯が本来生える位置からずれた場所に生えてしまい、歯並びが乱れたり、かみ合わせが悪くなったりすることがあります。具体的な不正咬合に、叢生(そうせい:歯並びのガタガタ)や正中離開(せいちゅうりかい:前歯の中心にすき間ができる)などが挙げられます。
永久歯の根っこを溶かしてしまう(歯根吸収)
骨に埋まっている過剰歯が永久歯の歯根(歯の根っこ)の近くにある場合、過剰歯がその歯根を溶かしてしまうことがあります。これにより、歯がグラグラしたり、早い時期に抜けたりするリスクが高まります。また、歯根に過剰歯がぶつかることで、永久歯の神経が傷つき、死んでしまうこともあります。
嚢胞(膿の袋)ができる
過剰歯ではまれにその周囲に膿の袋ができることがあります。これを専門的に「嚢胞(のうほう)」といいますが、袋が小さい間は自覚症状がなく、レントゲンで偶然発見されることも少なくありません。しかし、袋が大きくなると腫れや痛みをともなうことがあります。
過剰歯の治療法について
お口の中に過剰歯が見つかった場合、多くのケースで抜歯が第1選択肢となります。現時点でとくに症状がなくても、過剰歯は将来的に様々なリスクをはらんでいるため、タイミングをみて抜歯することが望ましいでしょう。
過剰歯を抜歯するタイミング
すでに生えている過剰歯については、すぐに抜歯を行います。過剰歯が骨に埋まっている場合(埋伏過剰歯)は位置や周囲の状態をレントゲンなどで確認し、抜歯のタイミングを患者様と相談しながら決めていきます。お子様の場合は、乳歯から永久歯への生えかわりの時期に抜歯するのが一般的です。
ただし、過剰歯の状態が複雑なケースや、将来的なリスクが低いと判断されるケースについては、抜歯せずに経過観察を行うこともあります。状況に応じて、歯科医師とよく相談しながら治療法を決定していきましょう。
埋伏過剰歯の抜歯の方法
骨に埋まっている過剰歯は一般的な抜歯よりも処置が複雑になります。まずはレントゲンや歯科用CTで埋伏歯の位置や向きなどを確認したうえで、歯ぐきを切開し、過剰歯を取り出していきます。過剰歯の位置によっては、顎の骨を一部削り取る処置が必要です。
まとめ
過剰歯は永久歯の生えかわりや歯並びに悪影響を及ぼす一方、自覚症状に乏しいため、自身で気づかず放置されてしまうことも少なくありません。とくに、お子様の場合は永久歯やその歯並びに重篤な影響を及ぼすおそれもあるため、生えかわりの時期(6歳以降)になったら一度歯科医院でレントゲン検査を行い、歯の数や位置に異常がないか調べてもらうことをおすすめします。
また、「生え変わりの時期がきたのに歯が生えてこない」「永久歯が変な場所からはえてきた」などの異常がみられたら、時間を置かず早めに歯科医院を受診しましょう。