キスをすると虫歯はうつる?虫歯リスクを下げる方法とは?
家族や恋人とのキスは、互いの愛情を伝えるうえで欠かせないスキンシップの1つです。しかし、ここで気になるのは「キスで虫歯はうつらないか?」という点です。ここでは、キスによる虫歯菌の感染リスクや、日常生活で気をつけるべきポイント・予防対策などをご紹介しましょう。
キスで虫歯がうつるって本当?
私たちのお口の中には400~500種類の細菌が常在し、どの菌がどのぐらい生息するかは人によって異なります。その中にはお口に良い作用をもたらす菌だけでなく、虫歯や歯周病を引き起こす菌も存在しており、口内ではこれらの細菌による椅子取りゲームが繰り広げられています。したがって、キスなどを通じて虫歯菌が多く定着してしまうことで、虫歯リスクが高まる可能性自体は否定できません。
一方で、虫歯は虫歯菌が単体で引き起こすものではなく、歯質や糖分の摂取、食事の回数、唾液の量など様々な要因が複雑に重なり合って起こる病気です。したがって、キスによって虫歯菌がうつったからといって、それが直接虫歯の発生に結びつくわけではありません。
キスと同様に、親との食器共有が子どもの虫歯リスクを高めるという話も、以前からよく聞かれます。ただ、この情報についても日本口腔衛生学会は「食器の共有をしないことで虫歯が予防できるということの科学的根拠は必ずしも強いものではない」としています。
(参考)
乳児期における親との共有について 日本口腔衛生学会
https://www.kokuhoken.or.jp/jsdh/statement/file/statement_20230901.pdf
キスで虫歯がうつる条件とは?
キスによって虫歯リスクが高まる条件には、以下の5つの要因が考えられます。
①セルフケアの不足
虫歯菌は「プラーク」と呼ばれる細菌の塊の中に生息しています。歯磨きをさぼったり、回数が少なかったりするとプラーク内で虫歯菌が繁殖し、虫歯リスクを高めてしまいます。
②歯質が弱い
人には生まれ持った歯の質があり、歯質が硬く、丈夫な人ほど細菌がつくる酸に対する抵抗力が強くなります。反対に、歯質が生まれつき弱い人は酸に対する抵抗力も低く、虫歯になりやすい傾向があります。
③食事・間食の回数が多い
食事や間食の回数が多いとお口の中に汚れがたまりやすく、口内に細菌が繁殖しやすくなります。
また、人が食事をすると、口内では細菌が食べかすから酸をつくりだすため、食後しばらくはお口の中は酸性に傾きます。通常は唾液の中和作用によって中性に戻りますが、食事の回数が多くなると唾液の作用が追いつきません。そのため、口内が酸性になった状態が長く続いてしまい、これが虫歯の発生へとつながってしまいます。
④唾液の量が少ない
唾液には口内にたまった汚れを洗い流す作用(クリーニング作用)のほかに、酸によって溶けた歯質を修復する作用(再石灰化作用)や、細菌の増殖を抑える作用があります。唾液の量が少ないとこれらの作用がうまく働かず、虫歯リスクが高まります。
⑤歯並びが悪い
歯並びが悪いと歯ブラシが隅々まで届きにくく、細かいすき間に食べかすやプラークがたまりやすくなります。その結果、虫歯のリスクが高まります。
キスを通じた虫歯感染を防ぐには?
キスによる虫歯リスクを低減するために、以下の点を徹底していきましょう。
1日2回の歯磨きを徹底
どんなに忙しくても、朝晩の1日2回の歯磨きはサボらずしっかり行うようにしましょう。とくに、寝ている間は最も細菌が繁殖しやすい時間帯なので、就寝前のセルフケアでは歯間ブラシやデンタルフロスなども併用し、汚れを丁寧に落としていくことがポイントです。
フッ素(フッ化物)の活用
フッ素(フッ化物)には歯質を強化し、虫歯菌の酸に負けない強い歯を作る効果があります。セルフケアではフッ素配合の歯磨き剤を使用するほか、歯科医院で定期的に高濃度フッ素塗布を受けるのがおすすめです。これにより、虫歯予防の効果をさらに高めることができます。
食事・間食の時間を決める
食事や間食の時間を決め、「ダラダラ食べ」「ダラダラ飲み」をしないよう心がけましょう。糖分を含む飲料(缶コーヒー・ジュースなど)も決められた時間のみとし、それ以外はお茶やお水など糖分を含まないもので水分補給を行ってください。また、アメやガムを口にする習慣のある方は、糖分ゼロ(ノンシュガー)の製品を選ぶようにしましょう。
歯科定期検診を受ける
虫歯を予防するうえでは毎日のセルフケアにくわえ、数か月に1度の歯科定期検診も欠かせません。歯科衛生士による歯磨き指導を受けることで、正しいブラッシング法を身につけることができます。また、虫歯はある程度進行しないと症状があらわれないため、定期的なチェックで早期発見に努めることも重要です。初期に虫歯を発見することで、治療によるダメージも最小限に抑えることができます。
まとめ
キスによって虫歯菌がうつる可能性はあるものの、それが必ずしも虫歯の発生につながるわけではありません。毎日のセルフケアを徹底し、正しい食生活を送ることで虫歯になるリスクは軽減できます。また、定期的に歯科医院を受診し、ブラッシング指導やクリーニング、高濃度フッ素塗布を受けることも虫歯予防では重要です。虫歯に関するお悩みやご不安のある方は、お気軽に当院までご相談ください。